大判例

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新宿簡易裁判所 事件番号不詳 判決

主文

被告人は無罪

理由

事実

本件公訴事実は被告人は昭和三十八年三月二十三日午後十時三十五分頃東京都公安委員会が道路標識によつて、最高速度を四十キロメートル毎時と定めた新宿区新宿一丁目六十四番地附近道路において、右最高速度をこえる六十二キロ毎時の速度で、普通乗用自動車を運転したものであるというにある。

証人森田悦至、同武藤弘之、同矢口敬、同高橋岩夫の当公廷における各供述並に森田悦至作成の昭和三八年三月二三日附記録用紙(速度)の記載及び同人作成の速度記録テープを綜合考覈すると前記日時場所において、時速六十二キロメートルにて走行した普通乗用自動車が第二信号係(測定係)地点を通過した後転回逃走した事実を認め得るが、その自動車が被告人運転の自動車であつたか否かにつき争があるのでこの点につき判断する。

被告人は本件違反事実を全面的に否認し、被告人は当時四谷三光町において男の客二人を乗車させ、新宿二丁目を通過し、本件速度違反取締地点に差しかかつた際警察官により停車を命ぜられた上検挙されたものである旨主張し、右走行経路の点は同人作成の昭和三八年三月二三日附乗務日報の記載により一応肯認し得るところ(被告人が本件違反の罪責を免れるため、ことさら虚偽の記載をしたものとすれば格別)、一方証人森田悦至の供述並に同人作成の記録用紙の記載によれば、違反自動車の特定事項中自動車車輌番号末尾二桁の数字を一旦九〇と記載し、後に九二と訂正したことが明らかであつて、このことは、末尾二桁の数字が不明確なるまま自動車の他の特定事項にもとづき、被告人運転の自動車を違反自動車と誤認したのではないかとの疑念を生じ、この疑念は検察官提出の爾余の証拠を以てしても払拭し難い。(転回逃走中の違反自動車をそのまま追跡停車させた旨の供述も、その停車させた場所が、証人矢口敬にあつては地下鉄の入口附近であるに反し、証人菊池秀夫にあつては三井銀行手前附近(同人の供述並に検証調書参照)であつて、相互に相違する点に鑑み、にわかに措信し難い。)要するに、当時時速六十二キロにて走行した違反自動車が被告人運転の自動車であつたという点につき遂に心証を得難いので、結局本件は犯罪の証明がないことに帰着するから、刑事訴訟法第三百三十六条により主文の通り判決する。

(昭和三八年一二月二七日 新宿簡易裁判所)

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